左右対称的に下肢の遠位部から始まり、筋力低下、感覚障害が上行します。原因としては糖尿病、尿毒症、アルコール中毒、ギラン・バレー症候群、n-ヘキサン中毒、遺伝性慢性多発性神経炎、急性炎症性脱髄性多発神経炎、慢性炎症性脱髄性多発神経炎などです。
多発神経炎の特徴は、左右対称的にしかも靴下と手袋をするところの感覚が強く障害されることです。
このため、「手袋靴下型の感覚障害」ということもあります。からだから遠い、遠位筋ほど強い筋萎縮(いしゅく)、筋力低下、筋緊張の低下、腱反射の消失をみます。自律神経系の症状として起立性低血圧、インポテンス、下痢と便秘をくり返したり、尿失禁などの症状をみることもあります。
多発神経炎には運動障害(筋力低下など)が強いタイプと、感覚障害(感覚鈍ま、しびれ)が強いタイプとがあります。運動障害が強いタイプには、ギラン・バレー症候群、シャルコー・マリー・ツース病、ポルフィリアがあり、感覚障害が強いタイプには慢性アルコール中毒、糖尿病性神経炎、がん性神経炎、ビタミンB1欠乏症〔脚気(かっけ)〕、アミロイドーシスなどがあります。
悪性腫瘍(しゅよう)患者の2〜5%に多発神経炎をみます。特に亜急性感覚性多発神経炎は肺小細胞がん、乳がんに伴うことが多く、抗Hu抗体が陽性になります。
診断は筋電図で神経伝導速度の低下を調べ、針筋電図で筋肉の活動電位の異常を見ます。さらに脳脊髄液でたんぱくが増加しているかどうかを調べ、特にむずかしいケースでは神経を切って顕微鏡的に検査します。慢性炎症性脱髄性多発神経炎や遺伝性多発神経炎は東京都が単独で指定している医療費等助成対象疾病です。