痛みもないのに突然真っ赤な血尿が出て、時には血の塊も出ます。肉眼的血尿は2〜3日で突然消えてきれいな尿になります。治ったものと思い込み、受診しない人も多くみられます。しかし、数カ月すると、また突然、無痛性肉眼的血尿が出ます。そこではじめて受診する人が多いようです。
原因は不明ですが、染料を扱う職人、コーヒーの好きな人、たばこをたくさん吸う人に多いといわれています。
尿検査で血尿があり、尿細胞診が陽性(クラス4または5)で、超音波検査で膀胱内に腫瘍があれば確実です。膀胱鏡で確定診断します。以前、フワフワした海草のような腫瘍を膀胱ポリープと呼んでいましたが、現在ではそのほとんどが膀胱がんとされ、再発の可能性があります。
軽度の場合には経尿道的に腫瘍を電気切除します。進行している場合には膀胱を摘除し人工膀胱をつくります。これにはいろいろな方法があり、おおまかには、ふくろを張り付けて尿を集めるタイプ(回腸導管)とふくろを必要としない新膀胱(腸を利用して新しい膀胱をつくり、それを尿道につなぐもので、尿道から排尿できるタイプ)があります。新膀胱の方法には、ハウトマン方式とスチューダー方式があります。
電気切除した場合には再発がないかどうか定期的(3〜6カ月に1回)に膀胱鏡検査をする必要があります。なぜならば、膀胱腫瘍は比較的良性なのですが、いぼのようにしばしば再発し、10年間で20回くらい電気切除を受ける人もあります。このため、長期間放置せず、こまめに受診して腫瘍があまり大きく育たないうちに治療することが大切です。数年間放置し膀胱をとらなければならなくなった人がたくさんいます。しかし、最近では、BCGという強力な抗がん薬が開発されたので、表在性膀胱腫瘍の再発は非常に少なくなりました。BCGは弱毒結核生菌で、これを水に溶いて膀胱に注入します。1回80mgで1週ごとに8回おこないます。かなり強い膀胱炎症状が起きますが、起きたほうがよく効きます。BCG療法でも治癒しない場合は膀胱をとることになる可能性が大です。しかし、BCGは浸潤性膀胱がんには無効なので、浸潤性膀胱がんの場合には早期に膀胱を摘除する必要があります。