印刷
病気の知識と治療全身血圧・血管の病気血圧・血管のおもな病気血管の病気 > 深部静脈血栓症

深部静脈血栓症<しんぶじょうみゃくけっせんしょう>

前頁 次頁

表面上は、下肢のむくみや表面の静脈が浮き上がって見える以外、強い痛みや発赤などの静脈炎の症状を呈さずに下肢や骨盤内部の静脈内に血栓が知らないうちに形成されている病態を指します。血栓が静脈壁からはがれて血流に乗って、肺に到達して肺塞栓症(そくせんしょう)をひき起こします。(→肺塞栓症)右側よりも左側に発生する頻度が高いです。手術、妊娠、長期の安静臥床(がしょう)、悪性腫瘍(しゅよう)などが誘因となります。静脈の超音波(エコー)検査や血管造影検査で、その存在や部位を診断し、治療はヘパリン、ワーファリン、血栓溶解薬などで血液を固まりにくくします。

エコノミークラス症候群(ロングフライト症候群)

深部静脈血栓症のうち、飛行機やバスなどの乗り物に長時間乗ることで起こるものをエコノミークラス症候群あるいはロングフライト症候群と呼びます。

乗り物などの狭い座席で長時間同じ姿勢を続けていると、血液の循環がわるくなりますが、特に一般の航空機内は地上より気圧が低く、乾燥しており、血栓が起こりやすい状況です。

このような条件に加えて飛行時間が6〜10時間以上と長くなる場合は、静脈血栓が起こりやすく、それが血流にのって肺に入り込むと肺塞栓症をひき起こします。

着席中や起立直後だけではなく、血栓形成後、数時間から数週間で発症する場合があります。足の痛み、むくみといった徴候があり、呼吸困難や胸痛、息切れが起こればこの病気の可能性があります。命にかかわることもあります。

血液の固まりやすい体質の人は特にこの症状を起こしやすく、最近外傷を受けた人、大きな手術をした人、肥満気味の人、経口避妊薬(ピル)をのんでいる人にも起こりやすいといわれています。

予防は血液の循環をよくすることと、脱水状態にならないことです。長時間同じ姿勢を保つことを避け、適度に足を動かしましょう。深呼吸も効果的です。衣類はからだを締めつけないようなものを着用し、水分補給を心掛けます。アルコールやコーヒーには利尿作用があり、水分の排出を促すことになるので注意が必要です。